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これからの日本の教育のために出来ることは何か?現役英語教師夫婦がデンマークで学んできたこと

こんにちは。nana(@nana_in_nz)です。

 

あなたは、高校生の頃に英語を教えてくれた先生を覚えていますか?

その先生は、どんな先生でしたか?

英語が好きで、もっと英語の魅力を伝えたいという思いは伝わってきましたか?

 

近年、「英語の先生が英語を話せない」ということが話題に上がったりもしましたね。

でも、心から英語を愛し、生徒に英語の楽しさを伝えようと奮闘する英語教師もいるんです。

 

それは、やんみるたいぽんという英語教師のご夫婦です。

彼らは「日本の教育現場と教育システムを改善したい!」と、教育が進んでいる国のひとつとして知られるデンマークへ赴きました。

 

日本の教育にも良い部分があるから、そこは残したままに改善すべき部分は改善していきたいと自ら立ち上がった彼ら。

戦後から変わっていない日本の教育システムをより時代に合ったシステムに改善していきたいと言う彼らの声をお届けします。

デンマークへの旅の概要

nana:今回デンマークの学校を訪れたということだけど、どうやって旅の手配をしたの?

 

やんみる:デンマークにはコネがなかったので、北欧専門のツアーコーディネーターの方にお願いして、希望を伝えて学校へのアポをとってもらった。

航空券・ホテルは自分たちで手配。

 

nana:旅はどんな内容だったの?

 

やんみる:1週間の滞在で、ひたすら学校を見て回ったよ。訪れた学校や教育現場は全部で6校。

  • 公立の高校
  • 0?5歳までの子どもを預かる統合型保育園
  • 幼稚園?9年生までを擁する総合学校
  • 試験や成績を排除し、学びたいことを学べる国際色豊かなフリースクール(デンマーク発祥で、北欧に広がっている)
  • 短い期間で学び直しができる私立の2年制課程学校
  • 障がい者と健常者が共に暮らし、様々なことを学べるフリースクール

 

nana:1週間で6校!それは忙しくたくさんのことを吸収できただろうね。

実際に訪れて感じた、デンマークの教育現場

nana:実際にデンマークの教育現場を見て、どんなふうに感じた?

 

やんみる:世界幸福度ランキングで2016年1位、2017年2位になった国であり、そういった国では「どうやって人々を幸せにする教育をしているのか?」と興味深かった。

現場では、自主性を育み、自律を促す教育が行われていた。その上で、高校卒業後の進路の幅が広く、柔軟なキャリア形成ができる。

同時に、キャリア教育専門家のサポートが手厚く、カウンセリング体制もばっちり

 

たいぽん:それぞれについて、噛み砕いて説明していくね。

自立性をはぐくむ教育

デンマークでは、子どもの頃から自主性を重んじる教育がなされている。

 

例えば、幼稚園で木登りをしている子がいるとする。

日本は、危ないからダメ!となるが、デンマークでは、安全策を講じた上で「やってごらん」、とまずはチャレンジさせてみることが多い。

 

 

やんみる:全体的に幼いころから自主性を重視されているためか、授業にも活気があった。

デンマークは、授業を受ける生徒が自分で選んで「勉強したいから」来ている雰囲気。

柔軟なキャリア教育

キャリア指導では、小学校から時間をかけて専門家が一人ひとりと面接を繰り返す

生徒にあった道、将来幸せになる道を専門家が一緒に考える。

 

たいぽん:とにかくデンマークの教育は、高校卒業後の選択肢が広い

高校卒業時も、キャリアカウンセラーのカウンセリングを受けながら自分に合った進路をじっくりと決められる。

 

ところが日本では、成績によって進路を限定されることが多い。

ひどい時には、先生に「あなたはこの大学に行くべき」と本人の希望に関係なく決められることもある。

少人数クラスによる手厚い指導

生徒の数に対する先生の人数は日本と比べて多い

一つの公立の学校を例に出すと、生徒41クラス1100人に対して先生101人+事務長、副校長、事務職4人、学習指導1人。

1クラスの生徒数は、20〜25人。

 

それから、幼稚園・小中一貫、発達障害のあるこの特別学級では生徒7人に対して先生3人と、手厚い!

 

やんみる:何よりも、先生方に余裕がある!!きちんと仕事を分担されているので、余裕を持って仕事に専念できる。

教員の専門性が重視されたシステム

デンマークでは、日本以上に教員一人ひとりの専門性が尊重されている。

本当に得意なことをきちんとやらせてもらえる。

 

日本では一人の先生が何でもこなす。

それが、生徒一人ひとりに対して先生が深く寄り添い、生徒の人間形成を支える日本の教育の素晴らしさの根幹でもある。

 

 

たいぽん:日本の教育の良いところはもちろんあるけれど、それをもっともっと良くするために、デンマークの教育から学ぶべき点もたくさんあった。

 

やんみる:デンマークでは、先生の一人ひとりの専門性を信頼されている。

英語の先生なら、英語の授業準備と授業が最も大事で、そこに全力で力を注ぐことができる。

それでこそ、教えを導く「教師」の本来の仕事ができると思う。

 

たいぽん:「適材適所」という言葉がまさにぴったりだった。

やんみる:日本では、英語の先生の英語のレベルが低いことがニュースになることがあるけれど、これは大きな問題だと思う。

教師の勤務時間と長期休暇

やんみる:デンマークでは、勤務は週30〜37時間まで。それを超えることは出来ないから、残業は基本なし

終身雇用ではなく、時間講師のような働き方。

 

たいぽん:8時間勤務ではあるが、個人の裁量権が大きい。自分の研究に大幅に時間を充てるなど、柔軟に対応できて自由が利く。

 

やんみる:日本の先生は働いている時間がとても長いのに、長期休暇も取れないのがとても辛い。

 

ここで、わたしのパートナーであるドイツ人のCさんから質問がありました。

[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”c-illustration.png” name=”Cさん”]長期休暇、ほしいよね!

でも2人は先生なんだから、ホリデーあるよね?[/speech_bubble]

 

やんみる:そうだよ、先生だよ。

でも日本はね、先生には長期休暇がないんだよ!多くても、1年に2週間くらいだよ・・・

 

[/speech_bubble][speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”c-illustration.png” name=”Cさん”]え!?たったそれだけなの?[/speech_bubble]

 

ドイツの教師はトータル3ヶ月くらいのお休みがあるよ!

  • 夏休み7週間
  • 秋休み7週間
  • クリスマス2週間
  • イースター2週間
  • そのほか

 

やんみる:私は毎日大体朝の8時前に出勤して、夜の8時過ぎくらいに退勤。9時になることもしょっちゅう。

さらに土日は部活動の練習や大会引率があり、他にも模試の監督や校務分掌の仕事が入ることもあるんだ。

だから家にはただ寝るために帰るような生活。

 

それに対してデンマークの人たちの働き方は、とっても効率的。

週38時間以上は基本的には働かない。

だいたい夕方16時には帰宅。(幼稚園の見学に行った際、ほとんどの親が父親も含め、最低でも16時には迎えにきていた!)

それからの時間は家族と過ごす時間。

 

お休みの日に働くことはほとんどなく、家族とサマーハウスという別荘に旅行したりしている。

 

やんみる:日本での働き方をデンマーク人の方に話すと、「そんなんでどうやって家族との時間を作るの?!信じられない!!」と言われた。

実際に、家族との時間が取れないのも深刻なこと。

時代の変化に応じた教育のICT化

デンマークでは、積極的に新しいテクノロジーを授業で活用している。

小学生からパソコンを買わせて、授業でも一人一台持っていて実際に使っている。

教育の中でもグローバル化が進んでいて「自分たちの国だけでは生きていけない」ということをみんなが知っている。

 

だから時代とともに生きていこうと国が柔軟に対応している。外に目を向ける力が、先生方にもある。

 

 

やんみる:未だにスマホ持ち込み禁止の学校が多くあるんだ。

グローバル化、IT化も進んでいるので、そういった技術も教えていったほうがよいはずなのに、そういった点でかなり遅れている。

 

たいぽん:日本は最初にリスクを避けようとする傾向が強いと感じる。

例えば携帯電話の例で言うと、その便利さや効果を差し置いて、それを使っていじめが起きる原因になるからダメ!と頭ごなしに禁止してしまう。

デンマークでは、便利だねということで、様々な対策を講じながら、とても便利な道具だから、まずは授業で使ってみよう!という発想になる。

 

やんみる:デンマークでも、授業でインターネットを使わせているが、先生方にとってそれは大きな挑戦だと言っていた。

なぜかというと、授業中にFacebookを見てしまう子も中にはいるから。

そこが課題ではあるが、起きた後にどう対処するか考えていく。

 

たいぽん:頭ごなしにスマホを禁止する指導は「人殺しちゃうから、車はダメ」「指切っちゃうからカッターはダメ」っていうのと同じで、本末転倒な気がする。

リスクの面も含めて、道具の正しい使い方を教え、学ばせていくことが大事だと思う。

デンマーク人の働き方の特徴と日本が見習うべき点

  • 先生方の専門性を十二分に発揮できるシステムが構築されている。
  • 授業準備など、教育のコアになる仕事に力を注げる。

やんみる:英語教師として生徒たちに英語の楽しさを伝えていきたいのに、そこに全力を注げないのがとても悔しい。

デンマークから日本の職場に戻って感じている「日本の教育現場の問題」

日本の先生は、多忙すぎる?!

やんみる:デンマークから日本の職場に戻って一番感じていることは、日本の先生は、多忙すぎるということ。

日本の教師は、世界で一番忙しいと言われている。一人の教員が抱える仕事がとても多い。

 

たいぽん:公務員だからきちんとお休みがあると思っている人もいるかもしれないけれど、実際は休日もないことが多いし、夜遅くまで働く環境に置かれている。

 

やんみる:もうね、こんな状況で良い教育が出来るわけがない!

英語の先生なはずなのに、それ以上の仕事がありすぎて、授業に専念できないのが辛い!!

部活動の顧問制度について

特に日本の部活動の顧問制度については、最近問題視され、メディアでも取り上げられてきている。

 

 

たいぽん:今年転勤になった学校で、経験がまったくない山岳部の顧問を担当している。

山岳部の活動で、顧問の先生も含めた死亡事故の前例もあるのに、未経験で希望していないにもかかわらず顧問を任されることに大きな不安を感じる。

 

やんみる:山なんて登ったこともない人が山岳部の顧問なんて、どうにかしてる。

専門でもないのに決められて、休日を潰されて、教科指導に専念できない。そのシステムを変えないと、日本の教育は良くならない。

 

たいぽん:一人ひとりの抱えている仕事が過剰だと感じることも多い。

部活のことは本当に深刻。

山岳部のように、部員の管理だけでなく、時に命の危険にも関わるようなスポーツの指導を経験もない知識もない「教師」にさせるのは大いに疑問。

 

 

やんみる部活動の専門家でもない一教員、教科の担任の先生が部活を持たされて、さらに校務分掌等の業務で週に何十時間もの残業を強いられているというところが日本の教育現場の大きな問題だと感じている。

振り返ってみて、日本の教育現場の課題とは?

  • 一人の先生の仕事が多岐にわたること。
    良い面もあるが、その分個人の負担が限界を超えている面もある。
    とくに部活動顧問制度は多くの問題をはらんでいる。
  • リスクを恐れるあまり、日本の教育のICT化は後れを取っている感じがある。
  • 欧米に追いつき追い越せ!で頑張ってきた時代も大事だが、時代が変わった今、それに合わせて教育システムも改築が必要。

 

たいぽんたくさんの仲間と切磋琢磨し合いながら、よりよい教育の形を模索していきたいと思っていたら、同じような考えを持っている人がいた。

 

真由子さん(@mayuko4460)という、中学校の教員をしている方で、「公立中学校 部活動の顧問制度は絶対に違法だ!!?icon-external-link?」というブログで発信している。

彼女は数年前から、部活動に対して拒否権をくださいという内容で書いている。

先生方でもネット上で署名活動し、3万人の署名が集まり文部省科学大臣に送ったことで、ニュースにも取り上げられている。

 

 

 

やんみる:この問題を変えようと思ったら、時間はかかる。10年かかる。

 

 

nana:10年経ったとき、わたしたちだと40歳になっているけれど・・・人生80年あるとして、自分の人生の残り40年の教育が変わるなら、まだまだやる価値あるよね。

これから成長していく子たちや、産まれてくる子たちの教育が変わると思うと、今からやって遅いことはない!

せっかく、こうやって「英語の楽しさを知ってほしい」という考えを持った先生がいるのに、それに専念できないのって悲しすぎる。

 

 

たいぽん:僕らは、こうして発信していくことで、近い考えを持った仲間を集めたい。

 

 

nana:やんみる・たいぽんの英語の授業を受けてみたかったなぁ。

15歳の子どもでも、「この先生は英語が好きなんだなぁ」「教育に熱心だなぁ」とか、逆に「この先生は英語好きじゃないんだろうなぁ」とか、わかるよね。

 

 

やんみる:そうそう、教師が好きじゃないことを教えて、生徒が好きになるわけがない。

そして私たちのように英語が好きでその面白さを生徒たちに伝えたいと思っていても、そこに専念することができないもどかしさを抱えている人もいる。

そういう仲間をどんどん増やして、活動をして、日本の教育と教師のあり方を変えていきたい。

 

やんみるたいぽん:まずは、私たち夫婦が、一歩踏み出します。

「幸せの国」デンマーク 学び旅報告会のご案内

やんみる・たいぽんがデンマークへ赴いたとき、仲間と一緒でした。

日本の教育をもっと良いものにしたい!と考える6人の仲間が集い、デンマークを訪れたのです。

6人はそこで何を学んだのか?これからどうしていくと良いのか?そういったことを報告・シェアする場を設けました。

以下、イベント告知文です。

 

日本の教育をもっと良いものにしたい!

そんな思いを持った6人が2017年春、海外の教育事情を学ぶために集い、日本を飛び出しました。6人が選んだ行き先は…

「世界一幸福な国」デンマーク!

  • 幸せな国を作る教育って、どんなものだろう?
  • 日本の教育と、どんなところが違うんだろう?
  • そもそも、デンマークってどんな国?

4/29?5/6の8日間にわたり、デンマークを駆け巡った私たち6人の「学びの旅」について振り返りながら、参加者の皆様とともにたっぷり語り合いたいと思います!

イベント開催日時

2017年9月16日(土)17:00?19:00(16:45? 開場)

会場

放課後NPOアフタースクール

(東京都港区新橋6-18-3 中村ビル2階)

※本イベントに関する会場への直接のお問い合わせはご遠慮ください。

参加料

無料

定員

20名(先着順)

お申込方法

記お申込みフォームより、お名前と参加希望の旨をご連絡下さい。

 

たくさんのお問い合わせありがとうございます。
満席につき、参加お申込みは締め切りました。

日本の教育を良くしていきたいと立ち上がる教育関係者が、ここにはいる

「日本の教育」については、実に多種多様な意見があります。

実際に教育する側として子どもたちと携わっている教師たちが、多くの不満を抱えていながらも働き続けているのが現状ではないでしょうか。

 

教師に限らず、不満だらけになりつつも改善するために行動しない人ばかりで自殺に追い込まれたりうつ病になってしまったりするのが、悲しくも現在の日本社会だと思います。

 

そんな中、自分たちが働く場を「このままじゃいけない」「日本の教育をもっと良くしたい!」と、お手本となる他国を訪れ、学び、シェアする英語教師夫婦とその仲間たち。

教育に携わる方々がこんな風に熱意を持って行動していることはとても誇らしいことです。

 

 

 

最後に、やんみるのある日のFacebookのポストをご紹介します。

 

普段から「どうやったらより生徒が英語を楽しめるか?」「どうやったらより深い気付きが得られるか?」と考えて試みているのが、やんみるという英語教師なのです。

 

 

with LOVE, nana