こんにちは。元警察官のnana(@nana_in_nz)です。
先日、愛知県の消防団に対して、市民から「消防車で食事に来ている」という苦情が寄せられたというニュースがありました。
ちなみに、消防士と消防団は似ているようで違っているので、少し説明しますね。ご存じの方はどうぞ先にお進みください。
- 消防士
地方公務員であり、市の職員。 - 消防団員
各市町村の「消防団」に所属して活躍する人たちのことで、位置づけは準公務員。
普段は自営や会社員などの仕事を持っているような一般市民によって構成されている。
町の防火と安全のためにボランティアとして参加、また災害時に出場するような体勢をとっている。
ニュースによると「消防車で飲食店に来るのは非常識」ということでした。
遊びに行ったわけでもなく、生きるために必要な食事をしたまでです。
消防士ではなく、市のボランティアで形成された消防団員への苦情だったそうです。
あなたは、どう思いますか?
日本人の「制服公務員」に対する目線
制服の公務員というと、タイトルにもあるように警察官・消防士・救急隊員、また自衛官や海上保安官などが思い浮かんできます。
その制服を着ているだけで、彼らが何の職業であるのかパッとひと目見ただけでわかることが特徴ですよね。
中でも警察官や消防士は、小さなお子さまにもすぐにわかります。それぞれ、車とセットで覚えてくれるんですよね。
- パトカーは警察官!(「おまわりさん」ではなく「警察官」という子も多かったです。)
- 消防車は消防士さん!
子どもにとっては、かっこいいキラキラした存在かもしれません。
では、あなたはどうですか?
警察官や消防士を見かけたとき、またはそれらの職業に対して、どんなふうに思っていますか?
日本では、警察官や消防士が制服のままコンビニへ行くのも未だに珍しい光景かもしれませんね。
警察に限って言えば、コンビニ強盗や万引き等の犯罪抑止のために制服のまま店内に入ることを許可してくれている店舗もあります。
制服でコンビニへ行くとお客さんに何度も見られたり、「何かあったんですか?」と聞かれることも多かったです。
それくらい「警察官がコンビニにいる」ことは日常的ではないんです。
本当は、朝から事件や事故の処理に追われて食事もロクに取れず、ようやく出来た休憩時間に急いで食べるカップ麺かお惣菜パンを買いに来ただけかもしれないのに。
海外の消防士や警察官は、もっと人間らしい

海外の制服公務員は、日本とはまったく違うところがあります。
わたしは住んだことのあるオーストラリアとニュージーランドでは、消防士も警察官も、制服のままコンビニはもちろんカフェやレストランで食事もします。
中には、保育園へ子どものお迎えに行く場合もあります。
それについて驚く人はおろか嫌な顔をする人もほとんどいません。
勤務の合間に食事をしなくてはならないのですから、制服のままごはんを食べるのは当然のことです。
ヒーローになり得るけれど、それよりも・・・
警察官も、消防士も、制服姿が凛々しくてかっこよくて、とっても強そうに見えるかもしれません。
でも、人間だから、あなたと同じ。
- お腹が空けばごはんを食べるし、トイレにも行きます。
- 勤務中24時間以上、ずーっと集中力が継続出来るわけではありません。
- 炎天下の活動は喉が渇くし、自身の熱中症対策も必要です。
- 極寒の日は顔に雪がかかって鼻水を垂らしてしまうこともあります。
試験に受かり、訓練を経て知識を身に着け、日々のトレーニングを重ねた人が警察官や消防士、救急隊です。
究極を言うと、人が制服を着ているだけなのです。
制服を着た公務員は、ヒーローのように見えるかもしれません。
例えば、逃げる泥棒を追いかけて捕まえたり、火災のあったおうちから中にいる人を救ったり・・・。
でも、ヒーローになりたいわけではないんです。
一番心から望んでいることは、事件や事故がなにも起こらないこと。
仕事が面倒くさいからではありません。本当は、ヒーローになるよりも目立たずにいることが一番なんです。
消防士や警察官が目立たないということは、市民が安全に暮らしている証拠だからです。
そのために防犯・防災パトロールをしたり、交通監視をして注意喚起します。
かっこよく目立つヒーローとは少し違うけれど、事故や事件が1件でも減って安心して暮らせる地域を作っていきたいというのが本当の気持ちです。
公務員だって人間。食事もトイレも睡眠も大切。
制服の警察官や消防士を見かけたとき、あなたはどう思うでしょうか。
あなたが見かけた時、彼らは食事中で笑みをこぼしているかもしれません。
「なんだよ、仕事中にゆっくりごはんなんて・・・」と思うでしょうか。
でもその時は、お昼ごはんも食べられずに事故が相次いで、ようやくありつけた夕食でホッとした瞬間かもしれないのです。
日々、市民の安全と安心出来る暮らしを目指して働く制服公務員。
いつどんな通報が入るかわからないので「今日の仕事はおしまい、また明日に持ち越そう。」ということは出来ません。
事件や事故が起こればいつでも出動できる態勢で、勤務時間の合間を見計らって食事をします。
食事中でも、通報が入れば中断して出動します。
それなのに、束の間の休憩と大切な身体を作るための食事に対するクレームが来るとは、なんて悲しいのでしょう。
日本でも、公務員が外で食事をしていることが「おかしい」と思われない日が早く来ますように。
with LOVE, nana