
あなたはまだあの子に気持ちを伝えられないでいるね。
思い続けているだけでは幸せになれないよ。大好きを伝えよう。
いつまでも 君を好きなままでいていいですか?
(Days)
っていう、大好きな歌詞を自分に置き換えて、そんなことを思っているね。
そのままでも、いいんだよ。
あなたが、それで満足なら。
学生の頃に思っていたあの子のことを、まだ好きでいたいのなら。
ひとつひとつの仕草や言葉にキュンとしていたあのシーンを綺麗に切り取って保存してあるんだってね。
あなたの心の中でアルバムを開く度に何度もキュンとしてしまうんだよね。
気がついたころには、あの子に夢中
あなたは、気がつけばあの子の虜だったね。
いつの間にか、あなたは見えている景色にあの子を映したがった。
視界からあの子が消えると、一生懸命探して追いかけている。
あれは、あなたが高校2年生の頃。
同じ部活だったから、毎日会えていたね。それだけで幸せだったんだよね。
学校がお休みの日でも、部活がある週末。
いつもの制服姿とはちがう私服姿が見られるから、寧ろ週末も楽しみにしていたね。
あなたは、あの子は女の子に興味がなさそうだと言った。
中学生のころも、女の子との浮いた話がなかったって聞いてホッとしたりしていたよね。
あの子は、人にあまり感情を見せない印象。
なかなか心を開かない、そんなあの子が好きだったよね。
あなたはあの子を好きなのに、仲良くなりにいこうとしなかったよね。
どうしてかって尋ねたことがある。
あなたはそっと、答えてくれた。
まるで映画を見ているよう
見ているだけで十分。
映画って、スクリーンの中には入れないでしょう。
あの子の世界に、わたしは入っていけない。
あの子の世界を壊すことはしたくない。
あの子が選んだあの子の世界を、スクリーンの外から観ていたい。
あの子と話すことは、あなたにとって極度の緊張をもたらした。
スクリーンの中の世界に入って、今まで観ていた世界とスクリーンの中に入り込んだ自分を繋ぎ合わせる必要があった。
だからあなたはいつも、「今日はあの子と話せて嬉しかった、緊張して疲れちゃった。」と言っていたね。
スクリーンの中のあの子は、感情移入しやすいあなたに色んな感情を味わわせてくれたんだよね。
あの子の屈託のない笑顔は、ずるい。可愛いよね。文句なしに。
あの子が痛みをこらえている姿は、悲しい。絶対にそう言わないけれど、歯を食いしばり時折見せるその表情が語っている。あの子の代わりに、あなたが泣いていた。
あの子の姿は鮮明すぎるほどに目に焼き付いているんでしょう?
あなたがあの子のことを話してくれるとき、いつもまるでそこにあの子がいるかのように、細かく話してくれた。
どんなビデオよりも、超高性能なビデオデッキをあなたはの頭の中に持っていたよね。あの子に関しては。
あなたの心はいつも波風が立っていた。
その視線の先にはいつもあの子。
心から笑った顔、イタズラな目、悲しいときの空気、物思いにふけって真剣に考えている姿…
あの子がただバスを待つその姿にさえも、愛おしいという気持ちがこみ上げて来ているようだったね。
それだけあの子のことを考えていたね。大好きだったんだよね。
それほどにも大好きだったけれど、あなたは気持ちを伝えることは決してしなかった。
嫌われることを極端に恐れていたあなた。
どう思われるかな?って心配ばかりしていたね。
小さな夢が叶ったとき

自転車の二人乗りをすることに憧れていたの、覚えてる?
あなたは、あの子と二人乗りしたいなぁって思っていたよね。
その願いがかなったって聞いたときのこと、わたしは忘れない。
あなたは、嬉しそうにしているのかと思えばなんだかモジモジしていて、嬉しくて興奮しているのとは様子が違った。
その話を聞いたわたしは「なんで?」と思わず言ってしまったよね。
あの子が、見た目から想像するよりもちょっぴり低めの声で「先輩、どうぞ。」と言ってくれたにも関わらず「ごめん、わたし重いから、漕ぐ。」と言ったんだって?
どうして素直に、後ろに乗っからなかったの、本当にあなたは不器用だね。
ちょこんと乗っていれば、可愛いものを。
あなたは気づかなかったかもしれないけれど、ちょっとはあの子も傷ついていたかもしれないよ。
部活であんなに頑張っている姿を誰よりも知っているはずなのに、その鍛えた足腰を信じるよりも、自分が重いと思われることを恐れる気持ちが勝ってしまったのだなんてね。
それでも、夢が叶ったと言ってあなたは嬉しそうにしていた。
心に灯った小さなあったかい火は、しばらく消えそうにないね。
思いを届けられなかったバレンタイン

あの子に片思いをして2年近くが経とうとしていた、高校3年生のバレンタイン。
高校卒業間近。
早くに就職が決まったあなたは、大学受験勉強に追われる同級生には構ってもらえないからって、後輩に遊んでもらっていたよね。
だからあなたの片思いは、後輩たちはみんな知っていたね。
バレンタイン当日、後輩たちみんなに用意したチョコレートと、それとは別に一つだけ特別に用意したチョコレート。
みんなに渡した後も一つだけ残っていたチョコレートがあったってことは、あなたの今までの話を聞いていたらわかるよ。
あの子に渡すチャンスはあったんでしょう?ただただ、渡さない言い訳を探していたんでしょう?
スクリーンの中の人だから、とかなんとかってさ。
勇気のないあなた。一歩が踏み出せないというレベルではなく、あの子の声が近づくと逃げ出してしまう姿が目に浮かぶよ。
自分の勇気のなさに嫌気が差して、緊張の壁を越えられないまま…けっきょく渡すことを諦めてしまったんだって言うから、ビックリしちゃった。
渡せなかったチョコレートはどうしたの?って聞くと、あなたが一番仲の良い後輩に渡したって目を伏せて教えてくれたね。
「応援してくれてありがとう。チャンスもあったのに勇気が出せなかったわたしだけど、これからもよろしくね。これ、持っているのも辛いから。」
辛い理由は、自分が勇気を出せなかった象徴みたいなものが残ってしまったから?
捨てられない理由は、自分の気持ちがどこにも伝わらないと思ったから?
渡された後輩のこと、考えたことある?
どうしようもないんだよ。あなたがあの子に気持ちを込めたチョコレートなんだもの。
ホワイトデ―の日。
あの子から「先輩、お返しです」とコアラのマーチをもらって混乱していたあなた。
想像してみて、あなたが後輩に渡したチョコレートを、そのあと後輩がどうするか。あなたは本当に鈍いよね。
あなたの後輩は、「これね、先輩からだよ」ってあの子にチョコレートを渡してくれていたんだよ。
あの子からもらったコアラのマーチは、賞味期限が切れるまで開けられなかったんだよね。
パッケージがボロボロになるまで飾ってあったよね。
開けると何かが出てくるんじゃないかっていうくらい、長いこと飾ってあったのをわたしは知ってるよ。
思いは腐らない
あのホワイトデーから6年経っても、あなたはまだあの子のことを気にかけている。
あなたは、あの子以外の誰かと恋愛しようと頑張っていたこともあったよね。
それでもどんなときも、あの子と比べてしまっている。
あなたは、あの子のことが今も好きだと言う。
あなたが17歳の時から、7年間思い続けているって言う。
ひとつ、言ってもいいかな。あなたが好きなあの子はね、もういないんだよ。
あなたが好きなあの子は。
あの子は、16歳だったんだよ。
そして、あの子を好きだったあなたは。
あなたは、17歳だったんだよ。
24歳のあなたが思っているのは、16歳のあの子。
あの子は過去のあの子で、今の23歳のあの子ではないの。
あなたの17歳のときの気持ちは、決して腐ることがないね。どうしてかって?
あなたが一番、よくわかっているでしょう?
あなたの思いは、真空パックされたままになっている。
一度も開封されないで、そこに残っている。
だからあなたはいつも、目の前にいる人と16歳のあの子を・・・スクリーンの中のキラキラしたあの子の姿を・・・比べてしまうんだよ。
あなたが好きだと思っているあの子は、今のあの子じゃない。
あなたは今のあの子を知っている?
あなたが知っているのは。
16歳のあの子。
開封するとき

あなたがあの子と誰かを比べてしまって恋愛を楽しめないのは、あなたがあの子に気持ちを伝えていないからだって、本当はとっくに気づいているよね?
この際、ハッキリ伝えてしまえ。
あなたが、高校生の頃抱えていた気持ちを、あの子に。
17歳のあなたに戻って、16歳のあの子に気持ちを伝えてみたらいいよ。
あの子はビックリするかもしれないね。
でも、いいじゃない。あなたのために、伝えるんだよ。
「大好き」という思いをあの子に伝えられたら、あなたが今あの子を大好きだと思っている気持ちと17歳のときのそれとは違うものだと気がつくはずだよ。
あなたはもうあの子と二人乗りをしたいとは思っていないでしょう?
高校の頃のように毎日顔を合わすわけでもないんだから。
17歳のあなたが今のあなたの中に居座っている間は、いつまでもあの子のことを持ち出してくるよ。
17歳のわたしの気持ちを、そろそろ開封してあげたらどうかな?
まだ、開けないでとっておきたいの?だったら、それでもいいんだ。
わたしからあなたへ
あなたが、あの子への気持ちをようやく開封できたこと、褒めてあげる。
長かったね。頑張ったね。
そして今、あなたへお礼を言いたい。
あなたがあの時頑張ってくれたおかげで、誰かとあの子を比べることがなくなったよ。
無理して恋愛をしようとすることもなくなったよ。
どう思われるかな?と気にすることもなくなったよ。
そして、大好きな人と出会えたよ。
大好きと毎日伝えられる人と出会えたよ。
あのとき、17歳に戻った24歳のわたしへ、お礼を言いたい。
頑張ったね。ありがとう。
今、わたしは大好きな人と一緒にいられてとっても幸せだよ。
with LOVE, nana